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「Q&A」 恩田陸

2006/11/13 18:27
それではこれからあなたに幾つかの質問をします。
質問の内容に対し、あなたが見たこと、感じたこと、知っていることについて、正直に、
最後まで誠意を持って答えることを誓っていただけますか。
「はい、出来るかぎりは。」

ありがとうございます。 それでは、タイトルと作者名を教えてください。
「タイトルは Q&A 作者は恩田陸です。」
作品のストーリーを教えてください。
「都内郊外の大型商業施設、まあダイエーみたいなものと思ってください。そこで重大死傷事故が発生します。死者69名、負傷者116名、かなりの大事故と言っていいと思うんですけどね、物語はその事故を軸として進みます。」
事故ですか?事件ではなく?
「まあ…ジャンルとしてはミステリですからね、そこは謎解きとして読み進んでもらえれば」

なるほど、ところで感想としてはいかがでしたか。
「…難しいですね。例えば、恩田陸の作品を読んだ事の無い人に、最初に薦められる本ではないな、とは率直に思えます。」
ほう、それはどういった点から感じるのでしょう。
「何点かありますけどね。この本の帯には、恩田陸ワールドの真骨頂、と打たれているんですが、これには非常に共感します。実に恩田陸らしい作品だと。」
作者らしい作品なのであれば、未読者にも薦めやすいものではありませんか。
「いや、それはこの作者の場合、逆ですね。代表作にはなりえない作品です…。」
それが恩田ワールドの真骨頂だと。
「恩田ワールドと言いますが、僕がこの作者の作品を読む時、いわゆるジャンルを考えずに読むんです。と言うよりも、恩田陸はジャンル分けが出来ない数少ない作家の一人です。」

世間一般ではミステリ作家というイメージが強いようですが。
「ある意味では、でしょうね。実際ミステリに区分される作品も多いですから。しかしそれでもジャンルミックスとも言える、一つの恩田ワールドと言えるジャンルを創り上げているのは確かです。仕方が無しにジャンル分けしたらミステリ、といった感じですかね。」
本作品は、そのジャンルミックスの典型だと。
「いえ、矛盾した話で申し訳ないですが、それは違うと思います。ジャンルの意味では今までの作品の中でもトップクラスにジャンル分けしやすいミステリでしょう。」
では、何故。
「作者の一つの特長として、心理描写の濃度にあります。会話の中、風景、天気、よくぞ文章だけでここまで巧みに何から何まで表現出来るなと。」
それが本作品をライトユーザーから遠ざけると。
「そうですね。重いんですよ。」
重い。内容としてですか。
「ええ。核心、謎解きに触れてしまうので多くは語れませんが、その事故…を巡って、そこに居合わせた人、被害者、当事者、多くの目線から真相に近づきます。」
近年、流行している、多人数多人称視点ということですか。
「ええ。みんな共通の話をしているんですが、つながらない。一向に真相に近づく様子が無い。見ているものが違いすぎる。」
集団パニックということでしょうか。
「そうですね、テーマは恐らく、恐怖、だと思うんですが、それに至る、それを裏付ける、作者の目に見えない恐怖、人間のパニック心理が引き起こす恐怖の描写は見事の一言です。」
それが、あなたには重い、と感じたと。
「サラっと読める作品では無い事は確かです。後半になるにつれ、ストーリーは良い意味で脱線して、最後は読者は置き去りですからね。」

置き去りとはまた、酷な言い方ですね。
「いえ、僕自身、作者のラストには期待していない部分が多いんです。ハッピーエンド以前に、しっかりと納得できるラストがあった作品なんて少ないですからね。」
それが、本作品では顕著だったといえるのでしょうか。
「…ある意味では、最初から置き去りだったのかもしれませんよ。」
というと。
「だって、なかなかお目にかかれませんよ。」
なにがでしょうか。


「この状況、あなたと僕のように、始まりから終わりまで、文字通り、Q&Aで物語が終わるなんて」

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